日本財団 図書館


 

っているが、この地区の町家は成立年代が明治から現在までと幅広い。全体的にいえることは、ここも材木町と同じく2階建ての家屋が多く、屋根形態が切妻(第3章・第1節参照)となっているところが多いということである。
つづいて、堀川運河の東側をみてみよう。運河と国道の間に位置する油津1、2丁目付近は、国道から見ると古い遺構が残っているとあまり感じられないが、一歩路地にはいると杉村金物店をはじめ、京屋、鈴木旅館、河野家や洋館、蔵、レンガ風倉庫など素晴らしい遺構が数多く残っており、それだけに最も魅力のある地区といえる。ここを歩いてみるだけでも、かつての町の繁栄とこのあたりが日南の一番の中心地であったということがうかがえる。さらに、この地区は運河に隣接しているという条件とも重なり、町づくりや保存修景するにあたってまず最初に取り組むべき地区であり、これからの町づくりに重要な役割を果たす地区でもある。また、国道に近いので騒がしいと思われがちであるが、この地区の道は昔からの道幅のままで、車が1台入れるか入れないか位の大きさしかなく、結果としてほとんど車が入らず静かで歩行者にとって歩きやすい環境となっている。
国道より束側に位置する油津1、2丁目地区は戦災の被害を受け、北部を除いて戦前の町家の遺構はわずかしか残っていない。戦後に再度区画整理が行われたと見え、道路幅も拡張され広く、また鉄筋コンクリートの家屋も目立ち、国道より西側とは逆に昔ながらの町並みの風情は感じられない。しかし、この地区は近くに国道が走り、路地の道幅も広く、また公園もあるので、西側地区とは対象的に視界が開け広々とした雰囲気が感じられる。
さらに、そこから東に位置する油津3、4丁目は、材木町、西町と同じく小山に沿って道が延び、その両側に町家が連なる配置となっているが、その各々の家屋の間口(道路に面した正面の幅)が3間から4間(第3章・第1節参照)という家屋が多く、屋根形態も切妻と入母屋がほとんどであり、なおかつほとんどが2階建てである。また、国道からもはなれ車の往来も少ないため、整然として落ち着いた町並みとなっている。

 

注1:歴史的土木事業を訪ねる 1996年著者 渡辺栄 発行所 山海堂
注2:日南市商工観光課

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION